本当に遅ればせながら、さとなおさんの明日の広告を読ませていただきました。

本書のターゲットは広告業界のビジネスマンで、”消費者が変わっているのだから、広告も変わらないといけない。これからの広告は、最適なメディアを組み合わせたコミュニケーション・デザインを初動として実施しないと、ちゃんと伝わらない”というのが大きなメッセージだと思います。

非常に分かりやすいお話で私のような広告業界に身を置かないものにとってもすんなり理解できるのですが、”広告会社はメディア縦割りだから大変だけど、がんばろうよ”という最後の章は、”広告業界は自由なイメージがあったんだけど、やっぱり普通の会社なんだな”と思いました。

本書は2007年に書かれたものですが、大筋において2011年でも全く古さはなく有益な内容だと思います。

ただ、ツール(メディア)が少し変わっている部分があります。2007年にはスマートフォンはありませんでした(*1)し、ソーシャルメディアもmixi以外はあまり利用されていませんでした。

*1 iPhoneは2007年にアメリカで発売されましたが、日本ではよく2008年7月11日から第二世界iPhone 3Gが発売

そこで、備忘録的要約にちょこっとだけ現在のソーシャルメディアを適応すればというコメントを書かせていただきます。

1. 分析とコミュニケーション・デザイン

(勝手要約)
「従来のマスメディア(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)では消費者に伝えることは出来ない時代になっている
10数年前は4マスといわれるメディアに広告を掲載していれば、結構、伝わった時代だったけど、インターネット、ソーシャルメディア、携帯電話など消費者の時間の使い方が違ってきてるんだから、ターゲットごとに行動分析をして最適なメディアを選択しないといけない」

これは、本当、その通りだと思います。さらにいうと、ソーシャルメディアといってもツイッター、mixi、facebookなどなど沢山あって、伝えたいユーザーがどこにいるのかを分析しないといけません。本サイトを運営していて肌感覚としてツイッター、mixi、facebookユーザーは”分かれている”と感じています。勝手に、みんな3つともやっていると思っていたのですが、ツイッターユーザーに響く情報が、facebookユーザーには全くだったり、その逆だったりと経験的に感じることが多々ありました。そのうち、ソーシャルメディアごとのユーザーの違いをデータで説明できればと思っています。

コミュニケーションデザインの例として、車の購買ターゲット分析において、車種ごとにユーザーが購読している雑誌などを分析し、メディア選択などをしたケースが上げているのですが、このデータをどのように取得したのかに興味があります。

2. テレビの力を過小評価してはいけない

(勝手要約)
「テレビは、あいかわらず最も幅広い人が見ているメディアだし、話題の中心(起点)として機能している。ウェブかテレビかの二者択一ではなく、ツゥウィンドウの時代。消費者はテレビをみながらツイッターでつぶやいてコミュニケーションをとっている。

ここにテレビ復権の可能性がある。これまで、録画してテレビ番組を見る人が増えた結果、CMが飛ばされて見られないとの懸念がひろがっていた。でも、みんなと話題を共有するためには、リアルタイムで同時に番組を見る必要がある。

これまでもテレビを起点に”お茶の間”が話題の発祥ポイントだったが、これからはネットが話題のスタートポイントになる」

これもおっしゃるとおりだと思います。ニコニコ動画もあいかわらず人気のようですし、日本人のあったテレビの付き合い方だと思います。

検索急上昇キーワードだったり、ツイッターのトレンドを見ているとテレビで紹介された商品や、用語などが上位にランキングされているケースが非常に多く見られます。

私も、未だに情報の起点はテレビだと思っています。

3. クリエイティブは大事

(勝手要約)
「コミュニケーション・デザインを行うことで消費者に広告を見てもらえる機会が増えるかもしれないが、他社も同様な手法をとった場合、両方を比較ことになる。そこで明暗を分けるのは消費者に価値変容をもたらすようなクリエイティブだ。広告は、頭のスイッチをオフにしているときに出会うもの。だからあまり高尚な表現ではなく、いい意味でフールなわかりやすい表現のほうが心にとどく」

相当前の話ですが、小沢健二さんと佐藤 雅彦さんが広告批評で対談した時に、2人とも東大ということで授業の話になって”村上(陽一郎)先生の授業が好きでした。とても難しい話をシンプルにわかりやすく説明してくださった。難しい話を難しいまま伝える人って、自分も理解していないことをバレないようにしてるんじゃないかと思うんですよね」という趣旨の話をしていました。

広告も同じではないかと思うときがあります。本当は、商品のことを好きでもなく、消費者にもたらす価値もわかっていないから、どんな商品でも使えそうな高尚な表現やコピーになってるんじゃないかと。

以前に知り合いのデザイナーの方から、集合住宅の広告を作成する仕事をいただいた時に、どんな人、家族が住んだら幸せになれるかを考えなから、10日間ほど住んでみてクリエィティブを作成したとお話を伺いました。

色んな考え方、スタイルはあるでしょうが、多くの情報を集め、そこから削ぎ落してシンプルな形におとしていくクリエイティブ・プロセスをとっているクリエイターの作品が比較的、響くような気がします。

さとなおさんの新刊が近々でると噂をききました。今度は、是非、すぐに読ませていただきたいと思っています。



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