必要な情報を瞬時に探すことができるため世界中で利用されている検索エンジンですが、特定の人にとっては不利益な情報を与えてしまうこともあります。

自分にとって嫌な噂もすぐに忘れられるという意味で「人の噂も七十五日」という諺もありますが、検索エンジンは75日で忘れてくれません。

企業の人事担当者が採用時に候補者名で検索を行い望ましくない過去の行動や噂を見つけるようなことがあったり、好意をもった異性を検索した結果、思わぬ過去や写真が検索結果に出てきた場合、検索された側にとっては自分の知らないところで不利益を受けることになります。中には事実と大きくことなる情報もあるでしょう。

検索エンジンが賢くなったところで、ページで公開されいる情報が真実かどうかまでは判断してくれません。

グーグルは永らく情報所有者以外からの検索インデックスからの情報削除に対しては積極的ではありませんでしたが、2014年5月13日にEU司法裁判所が出した「忘れられる権利」を認めた判決によって状況は変わりました。

この判決によってグーグルはヨーロッパにおいて削除リクエストを受け付けるようになり、この度グーグルが公表したレポートによると490,000ページに対して142,000件の削除リクエストがあり41.8%にあたる170,506件のURLを削除し残り58.2%(237,561URL)に関しては削除を拒否したということです。

では、どのようなケースが検索結果から削除され、どのようなケースでは削除されないのでしょうか。

削除にあたってグーグルは個人の権利と公的な関心を考慮したということでいくつかの例を挙げています。(In assessing each request, Google must consider the rights of the individual as well as public interest in the content.)

イタリアの女性から寄せられた削除リクエストは数十年前に配偶者の殺人事件に関する記事で、その記事の中で女性の名前も記載されていたケースです。この記事は検索結果から削除されました。

スイスでファイナンス・サービスを提供している人が、その人の過去のファイナンスに関する犯罪、逮捕歴などに関する10以上のページを削除するように求めたケースは、削除を拒否されました。

ドイツでレイプの被害者が、被害者名を掲載したニュース記事の削除を求めたケースは削除されました。

イングランドのメディア関係者が過去に投稿したコンテンツの削除を求めたケースは削除を拒否されました。

イタリアの犯罪被害者による数十年前の犯罪に関する記事の削除を求めたケースは削除されました。

イングランドの個人による過去にセクシャルハラスメントによって解雇された記事の削除を求めたケースは削除されませんでした。

イングランドの医師による手術の失敗に関する記事の削除を求めたケースは、手術にはふれていない医師個人に関する記事については削除され、それ以外は削除を拒否されました。

ドイツの個人から寄せられた個人的な恥ずかしいやり取りがパブリックに掲載されてしまったケースは削除されました。

イタリアの個人から寄せられた個人の写真が公開されてしまったケースは削除されました。

イタリアの個人から寄せられた詐欺行為に関する公的なレポートの削除を求めたケースは、削除を拒否されました。

イングランドで公的な立場にある人から寄せられた学生団体による解雇要求の削除を求めたケースは、削除を拒否されました。

こうして見ると、自身が当事者である犯罪歴に関するコンテンツは削除されず、被害者もしくは関係者として事件に巻き込まれ不利益を受けているケースは削除されるケースが多いように見えます。また、意図せずに公開されてしまった個人的なコンテンツに関しても削除されるケースが多いようです。

また、削除を求められたコンテンツをサイトごとにみると以下のサイトが上位10サイトでした。日本ではあまり聞かないサイトも含まれています。

www.facebook.com
profileengine.com
www.youtube.com
badoo.com
groups.google.com
www.yasni.de
www.wherevent.com
www.192.com
www.yasni.fr
www.yatedo.fr

(参考URL)
European privacy requests for search removals
Google updates ‘right to be forgotten’ stats: 142,000 requests to remove links to 490,000 web pages



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