東方神起、BoA、少女時代、Super Junior、SHINeeなどが所属するS.M.ENTERTAINMENTの金英敏(キムヨンミン)氏が、さんまさんと所さんの番組に出演し、世界進出の戦略をお話されていました。

芸能のみならず、FTA締結の推進、サムスンを筆頭に電子、自動車分野などビジネスでも韓国の世界進出がめざましく、グローバル化については日本の先に行っていると言われる韓国最大手の芸能事務所の戦略は、一般ビジネスにおいても参考になると思います。

金さんは、幼い頃にお父さんの仕事の関係で日本で過ごしたそうで、日本語も完璧でした。本人は発音は問題ないけど、語彙力が中学生レベルということでしたが、”弊社”や”語彙力”などの単語をきれいに使いこなしていました。また、非常に礼儀正しく、芸能事務所の社長というイメージではなく、一般のビジネスエグゼクティブという印象でした。

以下、メモです。

育成について – 完成品で市場に投入

  • 韓国は小さな国なので、最初から世界で通用する実力をつけたほうがいいということで、完成された状態でデビューさせるため、3年から5年のトレーニングがかかる。東方神起には7年かかったメンバーもいる
  • 30万人のオーディションをして、トレーニングを受けるは100名足らず
  • 突然スターになった場合に、自分を見失ったりしないためには道徳教育が重要。合宿などを通じて社会常識を身につけるようにしている
  • 日本は、完璧でないところがよかったり(受け入れられたり)するが、韓国はデビューの段階で出来上がっていることが求められる。日本は応援するには、ストーリー(コンテクスト)が大事で、芸能のみならず、スポーツでも高校野球で活躍した選手がプロ野球にいくと人気があるのも、アマチュアからのストーリーを知っているから

市場にあわせたプロモーション

  • タレントを売り出す際は、各国のマーケットにあわせたプロモーションを行なっており、少女時代が日本でデビューするときには、韓国とは違う日本版のプロモーションビデオを作成した。ビデオの中での衣装なども日本での流行にあわせたものを着るようにしている
  • スタッフはバイリンガルであり、現地のスタイル、流行を理解し、プロモーションに反映させている
  • 少女時代も9人がそれぞれ、日本語、中国語、英語など違う言語を話せるため、どの国でも活用することができる
  • 世界でも、日本は独特なメディア環境にあり、テレビにでるかでないかでブレイク度が大きく変わってくる
  • メディア向けのコメントも事務所がガイドラインを制定している

世界展開、プロモーションについて

  • Youtubeを中心としたネットを活用することで、全世界に一斉に情報配信するのが基本方針
  • 各国での再生回数をモニタリングし、どこの国でどのくらいの集客ができるかを調べている
  • 少女時代は、そうしたデータを元に、有明規模で集客できると判断し、日本のデビューライブを行い2万人を集客した
  • 少女時代は、Youtubeで徹底的にプロモーションし、デビューイベントに2万人集客することに成功。そのことがテレビ、雑誌なを通じて一般ニュースとなり、コアファン以外に広げるという戦略であった
  • スマートフォンが大きな役割を果たす。むかしは、ローカル局のテレビ、ラジオにでて、そこからプロモーションをするという進め方。しかし、今はいきなり世界中のユーザーにアクセスできる
  • 日本だけでなく、フランス向けにも同じアプローチをとり、パリでの初ライブは4分でチケットが売り切れた
  • 韓国がグローバル志向が強いのは、市場が小さいから。内需の大きさが違う。例えば、音楽市場でみれば日本は5000億円規模で韓国150億円規模だとする。同じクオリティの曲を投入しても、リターンが違うのは明白なので、最初から海外で勝負しなければいけない
  • アメリカでもヨーロッパーでもなく、アジアがエンターテインメントの世界で一番の音楽、エンターテインメント市場になってほしい
  • 私が日本のアーチストをプロデュースした場合、それが韓国とか、日本とかいう話ではない。アジアという考えでビジネスを展開し、やがてアジアの曲が1億ダウンロードされるという時代が来ると思っている

世界の価値基準を理解し、ネットを最大限に利用

エンターテインメントに対する要求は各国で様々だと思いますが、完成度が高いものはやはり普遍的な価値を持つと思います。エンターテインメントにおける価値とは、単純に歌唱力、ダンス力、サプライズ、ビジュアルなどで、K-POPにかぎらずジャクソン5、マイケル・ジャクソン、モータウン、マドンナなどが表現してきたのは、普遍性をもっていたからこそ、世界で受け入れられたのだと思います。

アメリカの場合は、韓国と違い市場規模の大きな国ですが、そもそも国民が多様性に満ちています。その結果、どの人種でも受け入れられるものが生まれるという土壌があったのではないでしょうか。

ヨン様の時も同じことが言われてましたが、少女時代の日本のファンは年齢層が高いとの意見もあり、完成度が高いことが日本においては、若年層に受け入れられにくいのかも知れませんし、古臭いと受け止められるかも知れません。

でも、極端に言えば、日本ではまったく売れないけどアジア、世界で受け入れられるアーチストの育成というのも検討してもいい時代になっているのではないでしょうか。

また、言うまでもありませんが、これまでのテレビ放送という国境のあるメディアから、インターネットをベースとしたグローバルメディアの出現によって、世界進出のコストは下がり、速度は飛躍的に早くなっています。

日本からも、どんどんアジア、世界に対してエンターテインメントを発信できればよいと思います。

(参考)
韓流エンターテインメントは世界を制するのか

アジア市場をひとつにする「アイドル」の作り方━━韓流エンターテインメントは世界を制するのか



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