2011年11月5日にNHK BSプレミアで放送された松本人志大文化祭は、NHKではじまった松本人志のコント番組MHK開始にさきがけで8時間30分にわたって、ダウンタウンの漫才から(NHKなのに)フジテレビのごっつええかんじのコントの紹介にはじまり落語について語ったり、映画監督としてヨーロッパの映画祭に参加したときのドキュメントまで松本人志の全てを紹介した番組です。

非常に盛りだくさんの内容だったのですが、私が最も面白く、そして考えさせらたのがスーパマリオの生みの親として知られる稀代のゲームクリエイター任天堂の宮本茂さんとの対談でした。

クリエイターには非常に勉強になる対談だったと思います。そこで、残念ながら見逃した方のためにサマってみました。*正確に書き起こしたものではありません。また、松本さんも”見ている人分かりますかね。外国語でしゃべってるようになってませんかね”とおっしゃっていたので、意図を捉えきれていない可能性大ですが。

童心と技術

松本さん)自分ではゲーマーとは思っていないんですけど、10本くらい本当に没頭したゲームがあるんです。そのゲームの半分は宮本さんの作品だということにある時に気がついて、お会いしたいと思っていたんです。その中のひとつがピクミンなんですけど、ピクミンは発想が子供なのに技術がしっかりしている。

宮本さん)ゲームは遊びながら作っていて、遊んでいる感覚は子供のときのままです。でも、ビデオゲームの技術はあがっているし、チームメンバーのスキルアップしている。遊んでいる人のことは気になります。自分と同じように遊んでもらっているかが気になります。

松本さん)よく心技体というけど、心は童心が大事で、宮本さんはそれをやっていると感じてます。

宮本さん)会社って技術が優位になるときがあって、自分も技術を見せびらかせたくなった時期があった。でも、それを怪しいと思うようになり、”本音”で創ろうと思ったんです。幸せなことに周りのメンバーも同じ考えだった。ゲームは自分のクリエイティブだが、メンバーのクリエイティブでもあるんです。でも、自分がいなければと、そうならないだろうなという関わり方をしたいと思っています。

ユーザーの期待と、オリジナリティの追求

松本さん)スーパーマリオ64の世界から出たくなくなったし、まったく、同じ世界をつくりたいとさえ思いました。

宮本さん)マリオ64は箱庭をつくろうとした。子供のときに遊んでいた場所を合理的にまとめた箱庭をつくろうとした。

松本さん)ピクミン3はでますか?

宮本さん)毎年、アメリカで創ってますと言い続けて、今年、遂に次のハードでつくると言いました。まだ、いつとは言えないけれど、ピクミン3はでます。5年間、つくってはやめてつくってはやめての繰り返しでした。

松本さん)ファンからは、気に入ってもらったコントをもう一回やってくれって言われるんです。キャラはそのままで、セリフだけ代えてくれと言われる。でも、それは嫌で、なにかを足したくなる。そのくせ、ゲームに関しては宮本さんに同じピクミンをステージだけ追加して出してくださいと言いたくなる。この矛盾。ファンって勝手だなあと思う。

宮本さん)仕事の悩みってほどんどがそれです。”期待に応えたいでも、一緒は嫌だ”という葛藤。でも、どっかの時点で自分にOKを出してきてるんです。いままでやってきたことを強化していく。補強していくというやりかた。これはわりと簡単ですが、複雑になり、重くなるので初めての人にはとっつきにくくなる。近寄りがたいものになる。

また、深いもの求めている人にも、深いもの渡せばOKではないと思っている。深いと思っている人にいかに外したもの、新しいものを提供できるか。”これもOK”って言ってもらうのがスゴイ好きで、これもOKではじめての人もOKのものでなければいけない。これを創ろうとすると迷走はさけられない。

松本さん)答えでないですよね。

宮本さん)お笑いには新しいものを求めてしまいます。お笑いなど他のメディアに対しては、”まだそうやってつかうの?”とひねくれて見れる。

松本さん)ほかのゲームはやりますか。

宮本さん)チェック程度はやりますが、自分のつくっているゲームをやるだけで時間がとられるので。パラパラ単発的にプレーするんですけど、他のゲームをやってると”ああ、ここで悩んでるな”とかいう見方をしてします。

普遍的なものを作る

松本さん)普遍的なものをつくりたいという意識は強いですか。

宮本さん)そうですね。そうあったほうがうれしい。古いか、新しいかとかよりずっと残るものをつくりたい。持っていることに意味を感じてもらえるようなゲームを作りたい。

松本さん)テレビの仕事をしながら、今、普遍的なものづくりが難しいと思っている。(作り手と視聴者の関係は)デコとボコの感じかと思っていた。いままでは受け手がボコだった。僕達が一生懸命やることがデコで、それがカチャっとあえば普遍的なものがうまれるんじゃないかとずっと思っているんです。
でも、最近受け手がボコじゃないんじゃないかなと思う。だから、僕らがあんまりデコを押し付けるとうまくかみあわない。視聴者のほうがデコになってきていて、ボクらがデコを押し付けるとうまく噛み合わない。

ゲームに関してはどうなんでしょう。ゲームを欲している人は増えているんでしょうか。

宮本さん)基本的には常に減るとおもっているので気にならない。お金の観点からは、ブームを何回しかけるかというサイクルがあるがそこから抜け出したい。
スーパーマリオが売れて、みんな褒めてくれる。でも、褒めてくれる内容の半分くらいは、スーパーマリオじゃないくて、ほかのゲームでもやっていることだったりする。

つまり、スーパーマリオ以外のゲームを知らない人が多い。みんながゲームを全部知っているわけじゃないんです。でも、ゲームの仕事をしていると、ゲームを知っている人ばかりと付き合うので、間違うんです。

松本さん)すごくよく分かります。

宮本さん)(ゲーム好きとゲーム初心者)両方のお客さんにいるという意識をもってやってる。(実はこれまでのものを継承しただけなのに)半分のところを評価されるというのは漁夫の利なんですけど。

(でも半分は新しいものなので)次に新しい半分をつくろうと思ったら、これまでの流れをみているだけでは作れない。

オリジナリティとは

松本さん)オリジナリティのこだわりが強いと伺ったんですが。

宮本さん)オリジナリティへのこだわりというよりも、みんながやるパターンにのると、それ以上のものを出さないとダメですよね。でも、独自に考えたものは、仕上げる余地がある。みんな怖いので安全なところに置きたがる。でも、そういうところに置くのは、同じようなものがたくさんあるので目立つのが難しい。でも、独自のものを置くのはあぶないけど、ラフにおいても周りが開いているので。あと、そのほうが仕事楽しいんですよ。

松本さん)本当にそうなんです。僕も、同じこと言ってるんですけど。言い換えると少し、卑怯なんですけど。

宮本さん)オリジナリティって天性のものとかいいますけど、それは放っといても出てくるもので、人に注目されるオリジナリティというのは、やはり他との比較ですよね。

チームのみんなは、放っておくと安全なところにコマを置きたがるので、私が、リスクのあるところにコマを置いて、みんながそっちに行き過ぎると、行き過ぎじゃないかと寄り戻す。そんな、距離感を調整するのがプロデューサーじゃないかな。

松本さん)どなりちらすことはありますか。

宮本さん)あまりないです。たまにやりますけど。他の人にみせるためにやったことはある。下の人がいて、中間がいて、ボクがいる。下の人に不満がたまることがあるので、(中間に)怒ってみた。でもうまくいかなかったです。

松本さん)僕も怒鳴らないんです。笑いの仕事なので、現場で怒るとその日だめになる。で、ストレスがたまる。

宮本さん)会社で会議していると重くなりがちになる。自分が議論の中にいると気が付かないけど、外から見ると笑わしたくなる。やっぱり笑ってると結果はOK、広がるので。できるだけ、自分を落として笑っている。

発想はどこから生まれるのか

松本さん)発想はどこでから生まれるのかって自分でもわからない。

宮本さん)私もそう。人の提案きくとき、悪いけど、ダメだと思ってる時がある。”悪くないけど、どうせやるんなら”と直していく。そうしているうちに形ができていく。なにもしていないと生まれない。

ヒットは生まれにくくなっている

松本さん)昔ほど爆発的なゲームが生まれにくくなってきている理由はわかりますか。

宮本さん)やはり、人に伝わりやすい部分がなくなってきてるのかとは思う。一言で人に伝わるものをつくりたいと思いながらやってます。

私は、世の中のほとんどのモノは自分が欲しいなと思ったけど買わなかったものだと思ってます。欲しいと思ったモノの80%は買っていないと思います。買ったのは20%。そこに需要はあるんだけど、買わなくてすんだとか、見なくてすんだとかなってるでしょ。そこをどうとりますかって話は、あまり真剣に議論してもしょうがない。だって、自分がそうなんだから。

だから、自分中心でいいかなと思ってる。

松本さん)でも、宮本さんはしっかりと消費者を捕まえている。そこがすごい。ボクはマニアックにいくととことんマニアックになってしまう。

宮本さん)でも、松本さんも企画をスタッフと練ってる間に”アカンわ。アカンわ”を繰り返しながら、どこかで合格点を出していると思うんです。私も、自分が合格点をだす理由はよくわからないですけど。

ただ、合格点の理由には”他の人がやりそうにない”というのはある。

松本さん)それはありますね。

宮本さん)どうせやるなら、そっちのほうが面白そうとか。(アイデアは)決まる時は、数秒で肉付けされていく。

松本さん)弟子はいるんですか。

宮本さん)弟子ではないけど、20年30年やっているメンバーが200人くらいいる。幸いやめた人はほとんどいないです。

日本の作品と海外の作品の差

松本さん)日本の作品と海外の作品の差はありますか。

宮本さん)私は全然ないと思ってる。働き方に違いはある。仕事をどれくらい自分の生活の中に持ち込んでいいかという。そこはみんな違うので。

日本のゲームがうまくいったのは、お客様にちゃんと分かってもらえるものを作るのが上手だったからだと思います。

ビデオゲームって限られた技術の中でしか出来ないので、夢の様なことを言ってもできあがらないんです。器の中で出来るもので快適に使えて、理解できるもの。それが日本がすごい上手だった。

アメリカは、そこらへんがダメでバンバン(パワーだけで)押し込んで来ていた。でも、最近パワーのほうが技術を凌駕するようになってきて。パワーで押し込んできたんだけど、だんだん作り慣れてきて細かいところも上手に造れるようになってきた。なので、今、アメリカの大作のほうがでてきている。

松本さん)格闘技とまったく同じ流れです。柔道、空手がアメリカに吸収され、パワーと技術が融合して今、格闘技はアメリカがNO1になってるんですよ。

めざすエンターテインメントは

宮本さん)やっぱり触ってすぐに面白いって言ってもらえるもの。ビートルズがすごい好きで。ビートルズの曲を聴くと、当時のことが思い出される。そういうゲーム。そのころを思い出すような。すぐ美味しくて、思い出に残るゲームを作りたい。

そういう意味だとメディアもなんでもいいんです。今の自分にはビデオゲームは一番やりやすいのでやっているだけで。ただ、インタラクティブが前提です。”使って”思い出に残るもの。

松本さん)お笑いは”絶対なければいけない”とは思われていないものだけに、”舐められてはいけない”と思っている。”だからこそ”、ひとの時間をもらうわけなので、納得してもらえるものをつくらなければいけないとは思ってます。具体的なものはわからないです。

宮本さん)舐められたらだめというのはすごいわかります。すぐ女子供のものと言われるけど。絶対可笑しい。子供を馬鹿にした発言はすごく腹がたつ。ものを知らないだけで、バカじゃない。

松本さん)テレビもそうなんです。子供を馬鹿にしていると言うか。”子供はこんなの好きでしょ?”っていうつくりの番組ってこけていく。やっぱり舐めすぎなんです。

やっぱり答えがでない話なので、こういう話は難しいですね。言葉で伝えられるなら創らないですもんね。



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